柘榴と鶴は協力して地下道を進みました。
檻の鍵が故障したため隔離していた実験用の屍体たちが逃げてしまいました。その中には柘榴の妹の小桃も含まれます。屍体たちは地下のトンネルを箱の中へ向かっているようです。ここで箱が屍体を引き付ける実験をしているのではという仮説が立てられました。なるほど箱は屍体を閉じ込める隔離施設だと考えられます。ならば箱の外にいる屍体を引き付けて逃がさないことも必要です。これ以上感染を広げるのを防止する目的があります。
屍体を感染者だととらえると、これはあらゆるウィスルパンデミックに共通することになります。もともと感染者はおとなしく隔離処置を受けるべきですが従わない者もいます。自分が隔離中にこのまま死ぬ恐怖や、家族と離れたくないという意識のためです。そのため自分の症状を隠して他人に感染を広げるおそれがあります。つまり求められるのは隔離を怖がらせないことです。隔離されると法外な治療費を請求されたり苦しんだりすれば誰もが恐怖を感じてしまいます。ですから治療費は無料、食事の心配もなし、残された家族にも収入の補償をするなど至れり尽くせりの対応が正解です。これなら皆が争って自ら申し出て隔離をされたいと欲するのです。感染がバレたら村八分にされて家族が差別されるなど、もってのほかであるというのが合理的結論です。ただ心情的に感染の危険を甘く見て行動した者に至れり尽くせり血税を使うのはどうかという議論もあります。