もうすぐ夜になるため五条や徹は宿舎に戻ってきました。
出迎えた生徒たちは港への道が土砂崩れでふさがっていることを知り絶望して不満を爆発させました。しかし五条はアップをかまして生徒の動揺を強引に抑え込むのです。なるほど私は土砂崩れの山を登って反対側の港へ行けると考えていましたがそれは無理のようです。何もない時なら出来そうですが夜になり周りは犬の群れに囲まれれば丹羽のように転落してしまいます。犬は高い場所に上がって来れないという設定と矛盾しそうですが単純な土砂崩れだけでも危険で港へは行けないのです。
夜になり生徒たちは戸締りをしました。窓を閉めてドアにカギをかけておけば犬は入って来れないことを志津間は強調しました。私はこの強調表現に一抹の不安を覚えました。前回まででチラリと出てきた猪の存在がその理由です。銃を持った島民らしき人物が猪に襲われていました。犬のように猪も狂っていればその突進力でドアは破られてしまうのです。生徒たちはまだ猪の存在を知らず我々読者は知っているというドキドキの状況です。
徹はあるアイディアを思いつきました。それは宿舎の外に集結している犬を無力化する方法です。犬をあえて宿舎に誘い込んで外からカギをしめて監禁する作戦には驚きました。この作戦のキモは宿舎の中の部屋が安全地帯であることです。仮に犬を宿舎の廊下に誘い込んでも皆がいる大部屋のドアのカギをしていれば犬は入って来れないと思われます。多数の犬が廊下でワンワンしている時に、生徒たちは窓から外に出て港へ逃げるのです。頭の良い作戦ですが徹が言っていた夜は危険であるということに反するとも思えます。私はやるなら昼間だと思うのです。