ヒグマの残酷な習性は考えさせられました。
腕を撃たれた祐介は薫たちに治療を受けています。治療といっても弾を取り出してウォッカで消毒するぐらいの応急処置です。しかしこれで一週間というリミットが厳しくなりました。選択肢としては小屋にずっと籠城していれば一週間後に眞伊子の仲間が車でやってきて助かります。しかし負傷者が出たことで誰かが電話まで歩いて、数日で救助隊を連れてこなければ間に合わなくなります。さらに暴れた西はライフルのストックで薫の腹部と祐介の腕を骨折させました。また薫が倒れ込んだ際に祐介のヒザ関節をやってしまったようです。これで私が考えていた脱出法が難しくなったと思っています。私が思案していたのは朝になって全員が外に出ることです。全員が別方向へ歩き続ければ熊は一人だけを追います。そのスキにある者は電話へ、ある者は街へ向かって助けを呼ぶのです。小屋がヒグマのアタックに耐えられない以上、仕方のない方法です。しかし今回の騒動で動けない者が出て脱出は困難です。
薫は西が殺人者だと責めています。西が密漁仲間を銃で撃ったと彼女は考えています。薫は遺体を見た時に、腕に散弾銃の穴が開いているのを覚えていたのえす。これは熊ではなく西の銃による傷です。ただ私には西が言い訳することは、たやすいと感じました。仮に西が仲間を撃ったとしてもそれはヒグマパニックの最中の出来事です。ヒグマが西の同僚をくわえて近づけば身を守るため発砲するのはやむ負えない行動です。その際に同僚に弾が当たってしまったとしても法的に問題ないと考えられます。
西は証拠となる遺体は熊が食べきってしまうと考えていますが薫はそうではないと指摘しました。ヒグマは少し食べて獲物を隠し何回も分けて頂くのです。そして腐りかけの肉が大好きであるという残酷な習性をもっています。そうすると外のエスも小分けにされているはずですが、今はそんなことを気にしてられないのです。ただ人間サイドも動物を狩って小分けにして食べます。冷蔵庫などに入れておき保存食は発酵させることもあります。ヒグマだけを残酷だと責めるのは違うのかなと考えさせられました。