宮田とマコトを天秤にかける状況になりました。
気配に気づいた清水が松明を投げると、そこにはミノ大猿と子猿数十匹がせまっていました。もちろん早乙女が登れたのですから難所の崖も猿たちは登ってきます。時間の問題で追いつかれるため扉まで到達できないのです。ただ現在の高所で登ってくる猿たちを排除し続ける戦法はあります。しかし武器も少なく大猿が来れば突破されてしまいます。
千葉はマコトに麻酔注射を持たせると崖から突き落としました。なんとマコトに注射を打って大猿を止めろというのです。たしかにマコトは敵と認識されておらず猿から襲われない存在です。彼が大猿の背後から注射を打てば数時間は動けなくなります。その間に扉を開けて脱出するという作戦です。ただ子供を使うことや注射をすれば敵と認識される恐れがあることなどから許されないのです。そして千葉と清水は先に扉の方向へ向かいました。もう道順は判明していますからマコトは用済みということです。
私が考えさせられたのは早乙女が真ん中で引き裂かれそうになっていることです。まず千葉と清水を先に脱出させないために彼らを追う必要があります。先に脱出されて出口に火を付けられれば猿と民間人が中で死にます。さらに一刻でも早く早乙女らが脱出して救助を呼んで重症の宮田を治療することが求められます。つまり早乙女は奥に進む動機があるのです。しかしマコトを置き去りにすることはできず現場に残って彼を助ける必要があります。マコトを助けるということは自分が崖を降りて猿の群れの中へ入ることです。宮田のために進むかマコトのために残るか究極の選択です。
早乙女の作戦は決まりました。まずマコトが麻酔の注射を大猿にします。大猿が寝るまでの時間をかせぐため早乙女が降りてナイフでけん制するのです。これはマコトの身を守るためと崖の上の葉山とシマへ大猿が近づくの防ぐ目的があります。麻酔を打たれたとしても眠るまでの数分で大猿が崖を登れば数名が死傷することは明白です。
早乙女は死を覚悟しています。たとえ大猿が麻酔で寝ても子猿がいるのです。子猿は当然、早乙女を敵ととらえてすぐさま襲ってきます。数十匹の猿に襲われればナイフを持っていても早乙女は死ぬのです。ちなみにマコトは逃げきれれば崖の上へ登れます。足の悪い早乙女は無理です。